『思い出さがし』 29・別れを前に
卒園式が近づいて来ると思い出すことがあります。それは友だちとの別れを知って気が重くなっている子がいて、お母さんの相談を受けた日のことです。女の子は交流が密になり、家族ぐるみの付き合いになるといつもいっしょにいないと忘れ物をした様な気持ちになるらしく、幼稚園でもくっついていて、どこへ行くにも離れません。トイレも手洗いも給食も一緒でないと顔色が変わるほど元気がなかった様です。親の方は「仲良しはいいことだね。」と気にかけることもなかったのですが、3月の中旬頃にA子さんが風邪で休んだ時、B子さんは1日中涙で何も手につきません。先生も心配して何人かの女の子に声をかけ、一緒に遊んだり食べたり並んだりする様に頼んだのですが、泣き疲れて先生のヒザで眠ってしまったB子さんを見て、何とか楽しんでもらうためにはどうしたら良いだろうかと考えていました。その日、お見舞いを兼ねて電話をした先生の耳に、A子さんの母の元気な声が響いて来ました。「先生、B子さん泣いていませんでしたか。」「はい。泣きっぱなしでした。それでご相談もしたいと思ったのでお電話を・・・。」と話しかけると、A子さんの声で「先生、私、明日行くよ。頑張って。」と少し風邪で咳をしながら答えるのが聞こえました。そして「先生、約束したんや、学校行ったら毎日会えんくなるし、あと少しいつも一緒におろうねって、だから・・・。」と言ってコンコンと咳こんでいたそうです。この子達は別れを知ってこんな約束をしたんだなと思うと愛おしくなりました。と先生は話してくれました。悲しさの分かる年になったのですね。
2012年03月16日 18:50