『思い出さがし』 25・表現会を前にして
表現会の練習がクレイマックスを迎えています。本番にそのピークを見せたいと思うのですが、子ども達もきっと同じ思いでしょう。早くにストーリーとテーマを理解してしまう子とじっくりじっくり取り組んで人物になりきっていく子、その時々で気分が乗ったり乗らなかったりする子がいて、バランス良く練習をすることは大変なことです。一人一人の体調を考えてピークまで持って行くまでのテクニックは、先生方の力量の問題にもなり、苦労する所でしょう。25年程前になるでしょうか。英語劇でスノーホワイトを演じた時、白雪姫のなり手は沢山いたのですが、いじわるなお妃様になりたい子は皆無でした。これでは劇になりません。いろいろ説得したのですが、女の子はみんなイヤがってなり手はいません。しまいには泣き出す子もいて、じゃあ先生の誰かがしたほうがいいのかもと思っていた所、やってみるという女の子がいて練習が始まりました。聞けば、泣いてイヤがった娘さんを説得したのはお母さんと担任だと聞き、ありがたいと思いました。「鏡よ鏡よ、世界で一番美しいのは誰だ。」というセリフを堂々と言い、くやしがったり満足したりする場面は圧巻でした。彼女の存在は舞台を引き締め、見る人を引きつけ、大きな拍手をもらいました。後で、あの役を本当はやりたかったのにという子も出てきたほどだったのです。色白で少し小太りの魔女は人気者となり、自信をつけて小学校へ入学しました。転勤族でもあったので中学生になってからは会うこともなかったのですが、2、3年前結婚したという年賀状を頂き、演技者だった彼女の幸せを祈っています。