『思い出さがし』 ⑭男兄弟のけんか
ふたつちがいの兄弟は一番けんかが多いといいます。幼稚園の時は小さなことでのけんかなので、親も何とか対応できたのですが、2人が小学校へ行ってから のバトルは、体力もあり大変だったと報告を受けたことがあります。幼稚園児の頃は、年長と年少で仲の良い兄弟のモデルの様でした。良い子を演じていた兄 の方が心配だったのですが、兄の助けを必要としなくなった弟は伸び伸びと自分を出し、仲間と全力で体を動かして遊ぶやんちゃ坊主として卒園して行きまし た。兄はやんちゃな弟のことを常にセーブして来たのでしょう。3年生になっていたので、弟の教室をいつも気にしてて、弟のクラスの横を通って自分のクラ スへ向かっていたようです。1年生の弟は、最初の緊張がなくなると、次男坊のやんちゃぶりを発揮し、3年生の頃には兄にけんかを売る様になったのです。 母親には、2人はとてもいい兄弟になるから、少々のことでは口出しせず待つように話しました。5年と3年の兄弟の大げんかを待って見守る日が来ました。 原因は不明ですが、こたつをはさんで掴み合いのけんかが始まり、ドタンバタンと音がする程でした。台所でじっと耐えていた母親が、ふと静かになった部屋 をのぞいた所、仁王立ちになった兄が腕を組んで「もっとなぐりたかったらなぐれ。けとばしたかったらけっとばせ。お前の好きな様にしていいよ。」と静か に力強く言った所、コブシをあげて全身でぶつかっていった弟が、兄の胸で力を抜いて「お兄ちゃん!」と泣きじゃくったのです。そして、2人は抱き合って 号泣したそうです。2人の母でよかったと母親も泣いておられました。