『思い出さがし』 ⑫ボク・ワタシのパパは世界一
ミニバスの運転をしていた頃、バスの中は動く保育室でした。3才から5才まで、10人から12人の子ども達が楽しくおしゃべりをしていました。
4才児が「ワタシのパパはね、運転上手なんやぞ。こ~んな長い車をうまいこと駐車場に入れるがやぞ。」と両手をう~んと広げて話しかけます。すかさず3才児が「ボクのパパ速いがやぞ。この間おばあちゃんのお家行く時、パトカーより速くてパトカーのおまわりさんやっと追いついてんよ。」「ふ~ん。サイレン鳴らして来たんか?」と5才児。「そうや。パパ、キュキューって止まったんや。」「それスピード違反やぞ。な?」と周りの子の同意を求めています。「おまわりさんに叱られたん?」と3才児。「何か紙もらった?」と4才児。「うん。何か紙もらってパパ笑わんくなった。」と本人。4才児と5才児は少し目を伏せて黙ってしまいました。3才児は「何で笑わんくなったん?お腹痛くなったん?」と聞いています。するとサイレン鳴らして来たんやろと言った子が「あのな、悲しくなったんや。だってスピード出し過ぎですって紙に書いてあって、罰金とられるんやもんな。」と説明しています。「罰金って何や?」と3才児。「あのね、お金たくさん払うことや。1万円とか。」「へえ~電車やとスピード出してもバンキン出さんがに。」「バンキンじゃないバッキン!」「ボクのパパ新幹線の運転もできるんや。」と話の方向を変えたのは3才児。「ワタシのパパ飛行機の運転できるよ。」と4才児が言い出すと、みんなパパ自慢。幼稚園近くになって今まで黙っていた4才の女の子が「私のパパ、宇宙ロケットに乗れるもん。」ときっぱり。ここでパパ自慢は終わりました。